なぜ、話しているのに噛み合わなくなるのか
― 組織で対話が止まるときに起きていること
「対話しているはずなのに、何も進まない」という感覚
会議は開かれている。
意見も一通り出ている。
一見すると、話し合いは行われているように見える。
それでも、どこかに残る違和感。
- 決まったはずのことが、現場で動かない
- 同じ議論を何度も繰り返している
- 会議のあと、かえって疲労感だけが残る
こうした状態に直面すると、
「もっと率直に話したほうがいいのではないか」
「意見が足りないのではないか」
と考えがちです。
しかし実際には、
話していないから止まっているのではなく、
話している“つもり”になっている
というケースが少なくありません。
多くの場合、問題は「意見」ではありません
対話がうまくいかないとき、
私たちはつい「意見の対立」や「価値観の違い」に
原因を求めます。
けれど、現場で見ていると、
本当に噛み合っていないのは意見そのものではなく、
- 何について話しているのか
- それぞれが何を前提に考えているのか
- どのレベルの話をしているのか
こうした前提や認識の部分であることが多いのです。
前提がずれたまま意見を出し合えば、
どれだけ話しても、すれ違いは解消されません。
対話が止まるとき、組織の中で起きている3つのこと
私が関わる中で、
対話が形だけになってしまう組織には、
共通して見られる状態があります。
1. 「語っているつもり」と「語れていない」のすれ違い
対話がうまくいかなくなる場面では、
立場によって起きていることが異なっていることが少なくありません。
現場の側では、
- 本音を語りたい気持ちはあるが、言葉にしづらい
- どう受け取られるかを考え、踏み込めない
- 「今さら言っても仕方がない」と感じている
といった状態が続いています。
一方で、上の立場にある人は、
- 十分に説明しているつもりでいる
- きちんと伝えたと認識している
- 納得してもらえているはずだと考えている
ということが多くあります。
けれど、
その説明は現場にはそのままの意図では届いていない、
あるいは、異なる意味として受け取られていることも少なくありません。
こうして、
- 語れていない現場
- 語っているつもりの上位者
という状態が並行して進むことで、
対話はすれ違いのまま形骸化していきます。
このすれ違いに目を向け、
少しずつ言葉を行き来させていくことが、
対話を取り戻すための大切なポイントだと考えています。
2. 違和感が「未整理のまま」放置されている
多くの組織では、
違和感を感じた瞬間に、
- 忙しさ
- 期限
- 空気
といった理由で、
そのまま先に進むことが選ばれます。
違和感は問題ではなく、
状況を考えるための手がかりであることが多いのですが、
言葉にされないまま放置されることで、
後になって別の形で表面化します。
3. 早く結論を出そうとして、「問い」が消えている
会議や対話の場では、
結論を出すこと自体が目的になりがちです。
しかし、
問いが十分に共有されないまま結論を急ぐと、
- 納得感のない決定
- 形だけの合意
- 実行段階での停滞
につながります。
問いを保ったまま考える時間が、
いつの間にか失われていくのです。
対話とは、答えを出すためのものではありません
私が考える対話は、
すぐに答えを出すためのものではありません。
また、
誰かが正解を提示するための場でもありません。
対話とは、
- 何が起きているのか
- どこで立ち止まっているのか
- 何がまだ言葉になっていないのか
そうしたものを、
少しずつ言葉にしていくための時間だと考えています。
答えが見つからなくても、
状況が整理されるだけで、
次に進む判断は大きく変わります。
状況を言葉にできたとき、起きる変化
このような対話を重ねたからといって、
すぐに目に見える成果が出るとは限りません。
けれど、
- 話し合いの論点が明確になる
- 誤解が重なりにくくなる
- 管理職が一人で抱え込まなくなる
- 判断に対する納得感が増す
といった変化が、
静かに積み重なっていきます。
そして後になって、
「そういえば、あのときの対話が一つの節目だった」
と、振り返っていただけることがあります。
まだ整理できていない段階からでも
- 何が問題なのか分からない
- 違和感はあるが、説明できない
- 話すべきテーマが見えていない
そんな段階からのご相談を、
私は歓迎しています。
状況を言葉にすること自体が、
次の判断につながる一歩になるからです。

