先日、取材対応の予定がありました。
部屋を借りzoomの用意をし、コーヒーも手元に、資料も整えて「さあ来い!」と待っていたら。。。まさかのドタキャン。というか、連絡が途絶えていたので予感はしていましたし、他の方を見つけたのでしょう。
一瞬フリーズしたあと、「これって僕が不採用ってこと?」と心の中で自虐的にツッコミを入れてしまいました。
せっかく準備していたこの話題をこのまま眠らせるのは惜しい。そこで今回は、取材のテーマをそのままブログにまとめておこうと思います。
面接は「人生の転機」に立ち会う場
面接は、会社が応募者を選ぶ場であると同時に、応募者が会社を選ぶ場でもあります。
もっと言えば、それは応募者の人生の転機に立ち会う、かけがえのない時間です。
キャリアコンサルタントとして多くの相談を受けていると「あの面接で言われたひとことが」「あの人との出会いが」自分の道を決めたと振り返る人が少なくありません。
つまり面接官は、応募者の未来の選択に立ち会い、その後のキャリアを左右しうる大切な役割を担っているのです。
面接は「会社のファン」を増やすチャンス
その応募者の評価や選別だけを意識すると、採用面接は冷たいものになってしまいます。
しかし実際には、応募者は会社や面接官を観察しています。「ここで働きたいか」「この人と一緒に仕事したいか」と意識的にジャッジしているのです。
ですから面接は、会社のファンを増やすチャンスでもあります。
そのために不可欠なのが「安心できる場づくり」です。
冒頭で「今日はリラックスして話してください」と伝えるだけで、応募者の緊張は和らぎます。
そして、面接官の緊張は応募者に伝わってしまうものです。面接官も明るくリラックス出来てないといけません。
人は安心できる場で初めて、自分の強みや本音を語り出せるのです。
「場」がすべてを決める ― Chemistryとしての面接
面接の質を左右するのは、面接官の質問や応募者の回答の巧みさだけではありません。
何よりも重要なのは「場」そのものです。
ここでいう「場」とは単なる雰囲気ではなく、人と人が出会ったときに生まれる chemistry。
安心感、誠実さ、言葉のやり取りの温度感――そうしたものの積み重ねが化学反応を生み、その瞬間に「信じて話してみよう」という気持ちが芽生えます。
ここでいう「場」とは、単なる雰囲気ではなく、人と人の間に生まれる chemistry(相性・呼吸、場の力) のことです。
逆に言えば、場のchemistryが生まれなければ、どんなに準備した質問や回答も空回りします。
面接はスクリプトを読み上げる場ではなく、応募者と会社がともに「場をつくり、chemistryを起こす時間」なのです。
強みは「出来事」ではなく「考えと行動」に表れる
「あなたの強みは?」と聞くと、多くの応募者は「協調性があります」「責任感があります」と答えます。
そこで面接官が聴くべきは、出来事そのものではなく、その時に何を考え、どう行動したかです。
例えば:
- アルバイトでクレームを受けた → 「相手を安心させたい」と考え、先輩に相談しながら丁寧に対応した
- 部活で意見がぶつかった → 「全員が納得できる形にしたい」と考え、対話の場を設けた
クレームやぶつかった意見そのものがどうであったのかを詳しく聞いたところで、応募者自身は見えてきません。
強みはラベルではなく、思考と行動のプロセスに宿ります。エピソードはあくまで入口。その奥にある価値観や姿勢を聴き取ることが、面接の本当の意味です。
これはよく言われていることでもあります。
そして、未来を聞くよりも過去を丁寧に聞くことです。過去の起きたこと。そしてそれにどう向き合ったのか。そこにその人自身、その人らしさが現れています。
否定せず、肯定的に聴く
応募者の話が浅く感じられても、そこで否定してしまえば心は閉ざされます。
「なるほど、そう考えたんですね」
「その行動を選んだのは、どんな気持ちがあったからですか?」
肯定的に受け止めつつ深掘りすることで、応募者は安心し、本音を語り出すようになります。
キャリア面談でも同じですが、「認められている」と感じた瞬間に、その人の言葉には力が宿るのです。
深く事実を聴くことの副産物
事実を丁寧に聴いていくと、強みを具体化できるだけではありません。違和感に気づけるという副産物もあります。
- どこか話に厚みがない
- エピソードの細部が急にあいまいになる
- 話の辻褄が合わない
こうしたサインは「少し盛っているのかもしれない」「何か言いたくない事情があるのかもしれない」と察するきっかけになります。
明らかな嘘は矛盾として露呈しますが、それ以前に「触れられたくないテーマ」の存在を感じ取れるのです。
これは「嘘を暴く」ことを目的にするのではなく、応募者の背景や本音に近づくための自然なプロセスです。
面接は、会社が「選ばれる」場
忘れてはならないのは、会社側もまた「事実を語る責任」を持っているということです。
面接では、会社の良い面ばかりを伝え、都合の悪いことは伏せてしまいがちです。
しかしそれこそが、入社後のギャップにつながり、やがて不信感や早期離職を招きます。
採用はゴールではなくスタートです。
会社もまた「選ばれる存在」であることを自覚し、不都合なことも誠実に伝える勇気を持たなければなりません。
応募者ばかりに正直に何でも語ることを要求してはいけませんね。会社側も言いたくないことが多いはずです。お互い様ですね。
面接官の「耳」が未来を左右する
応募者の強みを引き出せるかどうかは、面接官の耳の向け方にかかっています。
「粗探しの耳」で聴けば弱点ばかりが目につきますが、
「良いところ探しの耳」で聴けば、小さな言葉や行動の中に強みを見出せます。
耳の向け方ひとつで、面接の意味は大きく変わります。
双方向のキャッチボールを意識する
面接は一方的に質問を浴びせる場ではありません。
会社のリアルを伝えながら、「あなたの強みはここでどう活かせそうですか?」と問うことで、応募者は「働く自分の姿」を想像できます。
そのイメージが応募者の納得感となり、入社後の定着にも直結します。
まとめ ― 採用もキャリアも支援できる立場から
採用面接は
・応募者の人生の転機に立ち会う場であり、
・会社が「選ばれる」場でもあり、
・強みや本音を引き出すための chemistry(場の力) を生み出す共同作業です。
そのために面接官が心がけたいことは:
・安心できる空気をつくる
・過去の出来事を丁寧に聴いていく
・出来事そのものではなく「考えと行動」を聴く
・否定せず、肯定的に聴く
・事実を掘り下げうと、副産物として違和感や矛盾に気づくことも
・会社もまた「選ばれている」ことを理解し、隠さない
・推薦ルートや先生が書く推薦文章に表れる違和感や異常に敏感になる
・そして何より、「場=chemistry」を大切にする
取材ドタキャンの悔しさから始まったこの記事ですが、書き進めるうちに改めて実感しました。
面接は単なる採否判断の儀式ではなく、応募者と会社の未来をつなぐ化学反応の場。
そこでどんなchemistryを生み出せるか。 それこそが、面接の真価を決めるのです。
そして、ここでお伝えしたことは私自身の長年の経験にもとずいています。
おわりに ― 採用もキャリアも支援できます
採用側・応募者側、両方の視点からコンサルティングができること が私の強みです。
もし「採用の場をもっと良くしたい」とか「応募する際に強みを伝えきれるようになりたい」と感じられたら、ぜひご相談ください。
ここまで書いてきたように、面接は単なる採否判断の儀式ではなく、応募者と会社が出会い、未来をつなぐ化学反応の場です。
私はこれまで、人事部での長年にわたる採用実務経験と、キャリアコンサルタントとしての相談支援経験の両方を積んできました。
そのため、
・採用する側(企業・人事)には「応募者の強みを引き出す面接」や「場づくり」の研修・コンサルティングを。
・応募する側(学生・社会人)には「自分の強みを自然に伝える面接力」や「キャリア選択の納得感」を支援する個別相談を。
両面をサポートすることが可能です。
「面接をもっと良くしたい」「強みを引き出せる場をつくりたい」と感じられた方がいらっしゃれば、
「就活を充実させたい」と考えている方がいらっしゃれば、ぜひご相談ください。
きっと新しいchemistryを生み出すお手伝いができると思います。